旅の記録

「タイはどうですか?」について

「タイはどうですか?」

タイからたまに日本に帰ってきて、一番よく聞かれるのがこの質問だ。

家族や友人などいろいろな人からこの質問を受ける。 この質問を受けるとき、僕はいつもこう答える。

「居心地が良いです。嫌いな冬もないし、花粉もないし。嫌なところは、渋滞と大気汚染、たまにくる食中毒くらいです。笑」

これは本音の話で、衣食住で考えると、日本は冬があるし花粉もあるけど、基本的に空気も綺麗で食べ物も安心して食べることができる。

一方で、タイは渋滞が多く大気汚染がひどい時や食べ物のリスクなどがあるけど、ほぼ年中ぽっかぽかで、冷え性と花粉症もちの僕からすると、過ごしやすい面がある。

衣については想像に難くないと思うが、日本だと四季それぞれの服、タイだと半袖半パンでいることがほとんどだ。

当たり前の話だが、これは僕の目から見た「タイはどうですか?」へのざっくりとした回答であり、衣食住の点で考えたものだ。別の人や衣食住以外の観点から考えれば、もっといろいろな話ができる。

ここでそれを書いていくのもいいかと思ったが、これはまた追い追いじっくり書くとして、今回はひとつ書き残しておきたいことがあったので、それについてつらつら書いていきたいと思う。

日本への一時帰国×第二の故郷×所属意識

先日、カナダにもう何年も滞在している方とお話させていただいた機会があったのだが、「故郷」についての話で盛り上がり、その人が話してくれた内容がとても印象に残った。

「他国に何年も住んでいると、人によってはその国を第二の故郷のように感じてくると思うんです。僕にとってタイのバンコクは、まさに第二の故郷のようなもので、”バンコク”ときくだけで、いろいろな人の顔が浮かんできます。生きている限り今後何度でも滞在する場所になると思うんです。」

僕のこんなバンコク故郷化話をきいて、その人はこんな話をしてくれた。

「たしかにそれはカナダでも同じことを思います。長くいればいるほどとても大事な”場”になってくる。ただ、その話について一つ思うところがあって、カナダやタイが第二の故郷のような感じ、なのはわかるんだけど、たまに一時帰国で”第一の故郷”である日本、特に自分が育った”地元”に帰ってくると「故郷に帰ってきたんだ。」という安心感よりも、今回ここをまた去ってカナダに出発することを考えると、「ここにはもう戻ってこれなくなるんじゃないか」っていうとても寂しい気持ちになることがあるんです。第一の故郷なのに、出身地なのに、なんかもう自分が”こことつながっていない”っていうふうに感じて虚しくなる時があるんですよ。そしてカナダに戻るとほっとする自分がいる。」

この話を聞いた時、僕は衝撃を受けた。なぜなら自らも同じような虚しさを感じ始めていたからだ。日本に一時帰国したときの、あのふわっとしたなんとも言えない気持ち。なぜかバンコクにいる方がほっとする。どう表現すれば良いかわからずもやもやしていたのだが、まさに同じ心境であった。

「また日本に住むようになって、生活するようになればこの虚しさは感じなくなるかもしれませんけどね。」とその人は続けた。

「ホームシックではないんですよ。それとは全然違くて。なんていうかこう、中学や高校の卒業式みたいと言ったら大げさですけど、それにちょっと近しいというか。ここはここでずっとあるんですが、「ここはもう違うよ。今あなたには新しい”場”があるんだよ」って言われてるような気がして。故郷は故郷なんだけど、いつでも帰ってこれる”安心の地”ではない感覚なんですよね。」

留学先でホームシックになったなどの話はよく聞くが、今回お話いただいた内容はたしかにこれとは少し違う気がした。

国を離れているからこんな気持ちになっているのかはわからないが、たしかに自分が第一の故郷と噛み合っていないような、どこかよそ者になってしまったような感じは否めない。そしてこれはきっと、いつかタイ・バンコクを離れる時が来れば同じ気持ちになるのだろうと思う。

「タイはどうですか?」

将来自分がどうなっているか、どこにいるか、まったく想像がつかないが、今自分がいる”場”を大切に毎日を噛み締めて生きていこうと感じた日だった。

ABOUT ME
Author - Taishi Suzuki
バンコク在住5年目/WEB屋/旅ブログ「BE AMBITIOUS」を運営しています。Japanese travel blogger / I'm based in Bangkok and regularly travel throughout the region.